本研究室では作物栽培に関する以下のような研究を行っています。
1.中耕亀裂処理によるダイズの根粒着生制御(畑作)および湿害軽減(水田転換畑)
畑地ダイズのさらなる収量向上(目標は世界最高レベル)を目指し、中耕亀裂施肥技術の開発に取り組んでいます。開花初期のダイズの畝間に中耕亀裂処理機(試作機)による心土破砕を行い、同時に粒状の木炭を投入することで根粒の着生と発達が促進され、収量が最大で1.3倍に増加するとともに異常気象による収量の変動も抑えることが可能であることを見出しました。
一方、本州でのダイズ栽培は水田転換畑が中心であり、梅雨や台風による湿害の克服が大きな課題となっています。中耕亀裂処理は土壌の通気性や透水性を著しく向上させるため、ダイズの生育不良や収量低下を緩和するのにも有効ではないかと期待されています。2016年に行った試験では、2週間の湛水処理で弱ったダイズに畝間亀裂処理を行ったところ、湿害の軽い場所のみではあったものの収量低下が有意に抑えられるという結果を得ました。今後はより確実かつ大きな効果を得るため、亀裂処理の方法や深さ、処理を行う時期や回数など、適切な処理条件を明らかにするために研究を続けていきます。
2.混作・間作による作物の生産性向上あるいはストレスの軽減
半乾燥地帯に位置するアフリカ南部のナミビア共和国では、これまでイネ科のトウジンビエやソルガム、マメ科のササゲ、バンバラマメなど乾燥に強い作物が栽培されてきました。ところが近年は気候変動の影響で数十年に一度のはずだった大洪水が多発し、畑作物の生産が脅かされています。そのため新しい作物としてイネを現地に導入することが期待されています。ただし、イネは乾燥にはさほど強くないため干ばつ年には枯れてしまいます。そこで耐湿性の大きいイネと耐旱性の大きいトウジンビエやソルガムを一緒に植える(間作・混作する)ことで危険分散になるのではないか、という発想からプロジェクトがスタートしました。つまり「最低でもどちらかが生き残れば」というどちらかといえば消極的発想だった訳です。ところが2種類の作物を密接させて植えてみたところ、完全に水に浸かった状態ではイネの根から出る酸素が畑作物を助け、逆に非常に強い乾燥状態では畑作物が土の深いところから吸い上げた水の一部を根から放出し(ハイドロリックリフト現象)、イネがそれを利用していることが確認されました。それら水や酸素の作物種間での受け渡しは他大学(共同研究者)の室内実験やモデル試験で証明されたものですが、本研究室ではそのような効果がフィールド条件でも発揮されるのかを実験圃場での栽培によって検証しています。
ただし、先に述べたプロジェクトが2016年度で一区切りとなったため、とりあえず今年は転作ダイズの湿害をイネとの混植によって軽減できないかについての試験を卒業研究として実施する予定です。