当研究室では、土壌とGISを中心に次のような研究を進めています。

1.土壌

 農業生産に不可欠な土壌を対象に様々な研究を実施しています。研究例を以下に示しましたが、他にも、アルカリ土壌が周辺環境に及ぼす影響評価や、砂礫や破砕瓦を用いた富栄養化した湖沼を浄化して同時に作物を栽培することなど学生の希望に応じて様々なテーマに取り組んでいます。

(1) 土壌間隙構造の画像化と流体挙動解明

 土壌内部の水や養分などの物質移動は直接見ることができないため、土壌は均質な物体あるいはブラックボックスとして扱われます。しかし、水田や畑地などでは、ミミズや昆虫などの小動物の活動跡や植物根の腐朽跡などからなるミリメートルからサブミリメートル単位の複雑な間隙ネットワークが形成されます。水や養分はその中を流動するので、この様子を直接観察できれば、土壌汚染も含め様々な現象を評価することが出来ます。そこで土壌に造影剤を流してX線で撮影することで流体の挙動を観察、測定し、水田土壌や砂質土壌など様々な土壌内部に存在する間隙の役割について研究しています。

水田土壌に見られる管状間隙
(2) 緑肥作物を用いた土壌環境の成熟化

 生産性の低い農地の土壌を改善させるための土壌の成熟化に関する研究です。例えば、造成直後の土壌は栄養不十分で排水不良、硬いなど、植物の生長に不利です。そこで、作物に適した土壌に成熟(=植物にとって養分が十分で水はけが良く根の伸長に優れた状態)させるため、緑肥作物や有機堆肥がどのような効果があるか検証しています。

緑肥作物による農地環境の変化の比較
(3) 乾燥地における節水灌漑技術開発

 発展途上国でも導入しやすいよう、低コストで簡便な灌漑技術を開発しています。ここでは、透水性の小さい多孔質管や多孔質不織布のチューブを地表面近くに埋設し、内部の水圧を調整しながら土壌の乾燥状態に応じて自動的に灌漑する地中灌漑法の技術開発に取り組んでいます。

地中灌漑によるメロン栽培
(4) 吸塩性植物を用いた塩類集積土壌の改善

 乾燥地・半乾燥地では過剰灌漑などにより塩類集積が生じ、作物が生産できなくなる問題が発生します。そこで中国内蒙古自治区の塩類集積地に自生する耐塩生殖物であるケイリュウ(御柳:Tamarix spp.)の吸塩機能に着目して土壌改善を図ることを目的に、その耐塩性機構(吸塩・移動・貯蔵など)に関して生理学的・生態学的側面から研究しています。

御柳を用いた塩類集積土壌の改善効果
2.GIS(地理情報システム)

 生物資源管理学科には測量学と呼ばれる授業がありますが、その延長線上にGISがあります。GISは地域調査などで得たデータを既存の地図上に落とし込んでどのような位置関係があるか様々な観点から解析する場合に用いられます。現在取り組んでいるテーマは以下のものです。

琵琶湖集水域の生態調査

 現在、我々の生活環境の変化や外来動植物の侵入のために、琵琶湖周辺の河川、農業用水路や沼沢地の生態系が脅かされています。この生態系を保全するため、この実態を把握することが重要です。そこで、大学周辺の小河川や用排水路の魚類を対象にその種類や個体数、調査地点の流速、水温、底質などの環境状況を調べ、GISデータにとりまとめました。その上で琵琶湖に固有な魚類の生態系保全に関する条件を評価します。

滋賀県立大学周辺で見つかったゴリの分布
引用元: Esri, HERE, DeLorme, Intermap, increment P Corp., GEBCO,
USGS, FAO, NPS, NRCAN, GeoBase, IGN, Kadaster NL, Ordnance Survey,
Esri Japan, METI, Esri China (Hong Kong), swisstopo, MapmyIndia, ©
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